2026/08/09 撮影地:筑波実験植物園
Erycina pusilla は熱帯アメリカ原産の小型着生ランで、オンシジウム類に近縁です。非常に小さく生活環が短く、無菌培養で比較的速く育ち、フラスコ内でも繰り返し開花するため、ラン科の花の発生、遺伝子機能、進化発生、開花制御を研究するモデル植物候補です。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Erycina pusilla (L.) N.H.Williams & M.W.Chase |
| 科・属 | ラン科(Orchidaceae)/エリキナ属(Erycina) |
| 目 | キジカクシ目(Asparagales) |
| 和名・流通名 | エリキナ・プシラ |
| 中国名 | 小型拟文心兰(正式名は一定していない) |
| 英名 | 主に学名で流通。Dwarf oncidium などの非統一名もある |
| 原産地 | 中央アメリカ、カリブ地域、南アメリカ北部 |
| 花期 | 自生地では地域と気候による。適切な人工環境では比較的頻繁に開花する |
| 果実の成熟期 | 授粉後に蒴果を形成し、環境に応じて成熟する |
| 毒性 | 明確な強毒性の記録はないが、食用植物ではない |
| 薬用 | 信頼できる主要薬用価値はない |
| 特徴 | 微小な着生ラン。株に比べて大きな花、短い生活環、容易な無菌培養、フラスコ内開花という研究上の利点をもつ |
生態と小型化
樹木の枝や幹を足場にする着生ランで、寄生植物ではありません。水と無機塩は雨、空中湿度、樹皮上の有機物から得ます。小型化により大きな根茎葉系を維持せず、枝や樹皮の隙間でも生活環を完了できます。少数の狭長から楕円形の葉と、基質へ付着して水を素早く吸う根をもちます。
オンシジウム亜連に近く、黄色い花、大きな唇弁、広がる花被というオンシジウム類らしい姿を示します。分子系統研究により、このグループの属分類はたびたび調整されてきました。
モデル植物としての価値
ラン科は巨大で花の特殊化も著しい一方、多くの種は種子から開花まで数年かかります。本種は小さく、場所を取らず、生活環が短く、培養しやすく、早く開花します。筑波実験植物園の説明にも「フラスコ内でも頻繁に開花する。ランのモデル植物として期待される」とあります。
無菌培養から開花まで瓶内で観察できるため、花器官、唇弁、開花制御、花形進化と関連遺伝子の研究に有用です。モデル植物とは「もっとも典型的」な植物ではなく、幅広い生物学的問題を実験しやすい種を指します。
花・果実
適切な人工環境では頻繁に開花します。小さな緑色の自養株から細い花茎を伸ばし、株に比べて非常に大きな黄色い花をつけます。高度に特殊化し拡大した唇弁が目立ちます。
受粉すると大量の微小種子を含む蒴果になります。ラン科種子は養分貯蔵が乏しく、自然界では適切な菌根菌との関係が発芽に必要です。無菌培養では糖と無機塩を含む培地で初期の菌依存を代替できます。
毒性
明確な強毒性の記録はありませんが、食用植物ではありません。主な価値は観賞、ラン科の系統分類、発生・遺伝研究にあります。