2026/07/04 撮影地:小石川植物園
Paphiopedilum barbatum はマレー半島原産の常緑多年生地生・岩生ランです。濃淡の緑が大理石状に入る斑葉をもち、花がなくても識別しやすい種です。大きな背萼片、左右へ伸びる花弁、袋状に膨らむ唇弁が、昆虫の退出経路を制御する落とし穴型の送粉装置を構成します。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Paphiopedilum barbatum (Lindl.) Pfitzer |
| 科・属 | ラン科(Orchidaceae)/パフィオペディルム属(Paphiopedilum) |
| 目 | キジカクシ目(Asparagales) |
| 和名・流通名 | パフィオペディルム・バルバタム |
| 中国名 | 髯毛兜兰 |
| 英名 | Bearded Paphiopedilum / Bearded Slipper Orchid |
| 原産地 | マレー半島、主にマレーシア半島部 |
| 花期 | 自生地では主に春ごろ。栽培環境により変化する |
| 果実の成熟期 | 授粉後の蒴果は通常数か月で成熟する |
| 毒性 | 明確な強毒性記録はない。非食用で、樹液が敏感な人を刺激する可能性がある |
| 薬用 | 広く認められた現代的な薬用価値はない |
| 特徴 | 濃淡緑色の斑葉、縞のある大型背萼片、袋状唇弁、昆虫を誘導する落とし穴型送粉をもつスリッパラン |
原産地・葉・保全
マレー半島の湿潤な熱帯林に生育し、腐植の多い林床、岩、苔や腐植がたまる岩隙に地生・岩生します。典型的な着生ランのような発達した偽球茎はなく、短い基部茎から葉を束生し、根を腐植や岩隙へ伸ばします。
葉は長楕円形から帯状でロゼット状。濃緑、灰緑、淡緑の複雑な大理石模様があります。
斑葉は一部のパフィオペディルム群の識別形質です。弱い林床光への適応に関係する可能性がありますが、単純に「擬態のため」とは言い切れません。
高い観賞価値による野生採取と国際取引の圧力を受け、パフィオペディルム属全体がCITES附属書Iに掲載されています。人工繁殖株は法令に従って栽培・取引できますが、野生株を採取してはいけません。
花と送粉
成熟した葉束の中央から直立花茎を出し、通常1輪の大型花をつけます。上部の大きな背萼片は白から淡色の地に緑の縦筋や紫紅色の筋をもちます。左右の花弁は緑、黄緑から桃紫色で、濃紫から褐紫色の斑点と毛状構造があります。種小名 barbatum は「ひげのある」を意味します。
下部の大きな袋が特殊化した唇弁です。昆虫が袋へ入ると元の入口から出にくく、決められた出口を探す間に柱頭と葯を通過します。昆虫を消化するのではなく、花粉を確実に運ばせる仕組みです。
受粉後は大量の微小種子を含む蒴果を形成します。栄養貯蔵の乏しいラン科種子は、自然界で菌根菌の助けを得て発芽します。
毒性
明確な強毒性植物ではありませんが、食用植物ではありません。樹液との接触で皮膚刺激やアレルギーを起こす人もいるため、剪定や株分け後は手を洗ってください。