SPECIES ·

マヤラン

Cymbidium macrorhizon Lindl.

ラン科 · シュンラン属

花・胞子の時期

日本では主に7~10月

原産地

毒性

明確な強毒性記録はないが食用植物ではない

特徴

正常な緑葉がなく、光合成能力が低い高度な菌従属栄養ラン。地下根茎が発達し、開花時だけ地上に現れる。環境省レッドリスト絶滅危惧II類(VU)

KNOWLEDGE NOTE

出典・内容を順次整備

2026/08/09 撮影地:筑波実験植物園

マヤラン(Cymbidium macrorhizon)は日本、中国、ヒマラヤからパキスタンに分布する多年生の菌従属栄養植物です。正常な緑葉をもたず、発達した地下根茎から、菌根菌を通じて有機炭素と養分を得ます。大部分の時期を地下で過ごし、夏から秋だけ花茎を地上へ伸ばします。和名は兵庫県神戸市の摩耶山で発見・記録されたことに由来します。

基本情報

項目内容
学名Cymbidium macrorhizon Lindl.
科・属ラン科(Orchidaceae)/シュンラン属(Cymbidium
キジカクシ目(Asparagales)
和名マヤラン(摩耶蘭)
中国名大根兰、摩耶兰
英名Large-root Cymbidium
分布日本、中国、ヒマラヤからパキスタンなどアジア
花期日本では主に7~10月
果実の成熟期秋から冬に蒴果が成熟する
毒性明確な強毒性記録はないが食用植物ではない
薬用信頼できる主要薬用価値はない
特徴正常な緑葉がなく、光合成能力が低い高度な菌従属栄養ラン。地下根茎が発達し、開花時だけ地上に現れる。環境省レッドリスト絶滅危惧II類(VU)

菌類に依存する生活

落葉広葉樹林、常緑広葉樹林の腐植に富む林床に生育します。必要なのは暗く湿った環境だけでなく、地下の特定の菌根菌ネットワークです。自ら腐葉を分解する「腐生植物」ではなく、真菌を通して有機炭素を得るため、現在は菌従属栄養(mycoheterotrophy)と呼びます。

地下には太く肉質で分枝する根茎があり、種小名 macrorhizon も大きな根状構造を示します。地上葉がないため非開花時の野外調査は困難です。

ラン科種子は養分が乏しく、多くのランは発芽時に菌根菌へ依存します。緑色ランは成長後に光合成へ移りますが、マヤランは成株でも依存を続け、この関係をさらに特化させました。移植時に植物だけを掘り取っても、必要な菌類と地下環境を一緒に移せないため生存できません。

筑波実験植物園の展示では、十分な栄養を含む培地を使うことで、共生菌がなくても生育・開花させています。自然界の「菌から養分」という経路を、人工培地からの直接供給で置き換えたものです。

花・地下器官・種子

日本では主に7~10月、地下根茎から淡緑、黄褐色から紫褐色の花茎を伸ばします。

花被片は白、淡黄緑から黄緑で、唇弁には赤紫の斑紋と黄色部があり、葉や光合成器官を極端に簡略化しても複雑な繁殖器官を保ちます。花茎には退化した鱗片葉しかなく、主要な光合成を担えません。

地下の太い分枝根茎が長期に存在する本体で、菌根菌を通じて炭素と養分を得ます。花は特殊化した唇弁と合蕊柱をもち、受粉後は大量の粉状種子を含む蒴果になります。種子は適切な菌と出会って発芽し、地下で成長した後、開花期にだけ地上へ姿を現します。

毒性と保全

明確な強毒性記録はありませんが、食用植物ではなく採取・摂食すべきではありません。環境省レッドリストでは絶滅危惧II類(VU)。保全には植物体だけでなく、森林土壌、落葉層、湿度、菌根菌群集を含む地下生態系全体が必要です。