2026/07/04 撮影地:小石川植物園
フサナリセッコク(Dendrobium thyrsiflorum)は南アジアから東南アジアの山地林原産の多年生着生ランです。平時は竹節状の細長い偽球茎をもち、花期には成熟茎上部から数十花を密につける大型下垂花序を出し、球形・円錐形の花房になります。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Dendrobium thyrsiflorum B.S.Williams |
| 科・属 | ラン科(Orchidaceae)/セッコク属(Dendrobium) |
| 目 | キジカクシ目(Asparagales) |
| 和名・流通名 | デンドロビウム・シルシフロラム/フサナリセッコク |
| 中国名 | 球花石斛 |
| 英名 | Pinecone-like Raceme Dendrobium / Thyrse-flowered Dendrobium |
| 分布 | インド北東部、東ヒマラヤ、中国南西部、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナムなど |
| 花期 | 通常春から初夏 |
| 果実の成熟期 | 授粉後数か月で蒴果が成熟する |
| 毒性 | 明確な毒性記録はないが食用植物ではない |
| 薬用 | 薬用デンドロビウムの主要種ではなく、薬用品種と混同しない |
| 特徴 | 黄橙色の唇弁が目立つ密な大型下垂総状花序、竹節状偽球茎をもつ |
生育環境と季節性
山地林の幹や太枝へ根を固定する着生ランで、宿主から養分を奪いません。高湿度、多雨、良い通風と明瞭な季節変化をもつ環境に生育します。生育期の豊富な水と、涼しく乾いた季節の休眠・乾燥刺激が開花に関係します。
19世紀からヨーロッパ園芸で栽培され、花のない時の灰緑色の竹竿状株と、開花時の巨大な花房との強い対比が評価されました。
花・偽球茎・種子
春から初夏、成熟偽球茎が冬の比較的涼しく乾燥した期間を経た後、上部節から大型の下垂総状花序を出します。短い花柄に多数の花が密集し、球形、円錐形、房状に見えます。萼片と花弁は乳白から淡黄、中央の大きな唇弁は鮮やかな黄から橙黄色です。
長楕円から披針形の葉は偽球茎上半部につき、成熟・休眠時に一部落葉します。節の明瞭な細長い偽球茎は水と養分を貯蔵し、灰白色にしぼんだ老茎も開花や資源維持に関わるため、外見だけで切除してはいけません。根被をもつ根は雨を素早く吸収します。
蒴果は大量の微小種子を放ち、自然発芽には菌根菌が必要です。
毒性
高毒観賞植物としては知られませんが、食用可能を意味しません。「石斛」の名だけで薬材と判断してはならず、薬用石斛は特定種、加工法、品質基準によって扱われます。本種は主に原種観賞ランです。